【Blog】製品開発支援システムの仕組み vol.1

改善活動の目標値として634(ムサシ)活動といったキャッチフレーズのもと、製品開発業務の改善を推進している企業も多いと思います。
634活動とは60%の品質向上、40%の期間短縮と30%のコスト削減を実現するための達成目標のことです。
品質を向上させより良い製品を市場に出し、期間を短縮していち早く市場を押さえ、かつ競合よりコストを抑えることで、競争に勝ち残るというシナリオは誰もが納得する戦略です。

しかし、製品開発業務で期間を短縮したり品質を向上させるに、何から手をつけてどうすればよいのか具体化することが難しいため、関係者の理解を得られずに浸透していないことも多いと思います。
製品設計プロジェクトの不具合発生数を60%削減したけども、不具合を発生させないために時間をかけすぎていては意味がありません。
もちろん期間短縮の目標を達成するために品質チェックを疎かにするわけにもいきません。

このような相反する目標を達成するためにPLMというシステムの力を有効活用すべきなのですが、PLMシステムの効果を明確に説明している資料が少ないこともあり、PLMシステムを有効活用できている企業はそれほど多く有りません。

そこで、この連載ではPLMシステムを使ってどのように製品開発業務の効率化につなげていくのかを明確にし、その仕組み具体的に紹介していきたいと思います。

「PLMシステム導入効果とは」

「PLMシステムの費用対効果がわかりにくい」とよく言われます。その理由は明確で、PLMシステムを部品表(BOM)管理やCADデータ管理といった管理のツールに使っているからにほかなりません。
PLMシステムは、設計業務プロセスを効率化することで初めて効果を生むことが出来ますが、データを管理するだけでは多くの場合投資に見合った効果を出すことができません。

先の634活動の例にしても、設計データを管理する仕掛けだけでは期間の短縮もコストの削減もできません。
確かに設計に必要な情報をデータベースに一元管理することで、必要な時に必要な情報を取り出せることが出来るようになり検索のスピードや情報の共有化を実現することが出来ますが、これで効率化できるのは個人の作業効率がアップするだけです。

製品開発業務では、企画段階で商品戦略を立案し、それを具体化する設計フェーズでプランを詳細化し、その製品を作るための部品や材料を選定・調達したり、製造コストをさげ且つ、高品質を実現するための製造方法の検討までの一連のプロセスを設計データは受け渡されていき、これらのプロセスを効率化して初めて期間短縮やコスト削減及び品質向上といった目標値の達成することが出来ます。
一部門だけの効率化は往々にして他部門にしわ寄せが行ってしまい、全体効率という点では結果として効果が出ないということが良くあります。

では、このような特徴を持つ設計プロセスで、何をすれば効率化が図れるのでしょうか?
一つの例を使って説明してみたいと思います。(わかりやすくするため登場人物は簡略化しています。)

たとえば製品を量産するまでに関係する部門として設計部、購買部及び生産技術部を例に考えてみましょう。
それぞれの部門でかかる期間を設計部は50日、購買部が15日、生産技術部が35日の計100日で設計を行うとします。
そこで設計部門だけを対象に期間半減プロジェクトを立ち上げ、設計部門は目標の50%を達成し25日を達成できても量産開始までのスループットで見ると25日(設計)+15日(購買)+35日(生産技術)=75日(-25%)しか達成できていません。
また部門をまたいで作業進めることにより作業の手戻りなどが発生するため、プロダクトライフサイクルに渡る作業効率はかえって落ちていることもあります。

このように一部の部門だけを効率化しても製品開発業務の効率化には大きなインパクトを与えることが出来ないことがわかります。

部門をまたいだ業務プロセスの代表例は設計変更管理業務です。
設計変更管理業務を効率化することで業務の手戻りを大幅に削減することが可能です。
ただし、設計変更回数の削減だけを目標にすることは逆効果となるため注意が必要です。
製品開発業務では、設計変更を繰り返すことで不具合を撲滅していくとともに、コスト低減や効率的なモノづくりを実現しているからです。
特にすり合わせを得意とする日本のモノづくりでは、丁寧な設計変更の繰り返しを実施することで、海外の企業に負けないモノづくり力を維持してきました。ただし人間系で。

PLMシステムを導入している企業の成功事例の多くは、PLMシステムを設計業務プロセスを構築するツールとして使うことで、設計内容が70%の完成度でも情報を共有し、他部門からのフィードバックを多く受けることで短期間に完成度を高めるプロセスを確立しています。
特に設計変更業務プロセスに対して手間をかけることなく、変更点・変化点を関係部門間で共有できるようになることで、作業の手戻りを最小限に抑え、設計変更によるレビューを重ねつつトータルの期間を短縮することを実現することが出来ます。

PLMシステムを使うことで、設計変更による手戻り作業を削減し、設計期間を短縮することが出来ると、この結果は品質の向上につながってきます。
一連の設計成果物を他部門の作業に渡すとき、前工程作業が行った変更点・変化点をわかりやすくすることで後工程における作業の間違いが少なくなり、また変更による影響範囲を簡単に分析することが出来ると余計な作業工数の発生を抑えることが出来ます。また、後工程から受けたフィードバックによる影響範囲を簡単に把握できるようにすることは、将来発生するであろう後工程視点での潜在的な不具合をあらかじめ設計段階でつぶしておくことを可能とします。

コスト削減についても同様で、製品設計にかかわる多くの部門を巻き込んだ情報共有環境を実現することで、有利な部品調達や効率的なモノづくりの検討が行えるだけでなく、マーケティングや販売戦略を並行して実施できるようにすることで、期間短縮や品質向上により製品開発原価を低減するとともに、効果的なプロモーション活動による売り上げ及びシェアを向上させることで、結果的にコスト削減目標を達成することが可能となります。

製造業の設計者だけでなくどの産業においても知的労働者の行動パターン振る舞いは同じで、一つ作業時間が短縮できてもその短縮した時間を使ってより良いものの検討を始めてしまうという行動をとります。
納期内で時間が余ってしまうと、多くの作業者はより詳細の検討を始めてしまいます。
これによりより高品質なものを実現出来ますが、目標とした期間短縮を実現出来ていません。
知的労働者の作業を終わらせるのは納期しかありません。
ただし、納期があまり短すぎると検討がおろそかになってしまって逆効果です。

設計業務を効率化するには適切な設計作業時間を管理しつつ、無駄な作業をできるだけ省くとともに必要なデータを簡単に見つけるような環境を構築していく必要があります。
「期間短縮を実現すると品質が疎かになる」、「品質を向上させるとコストがアップする」、「コストを削減すると品質向上と期間短縮が実現できない」、製品開発業務の改善はこのような相反する条件を解決する必要があります。
この問題を解決するためのキーワードが「つなげる」、「しらせる」、「みつける」という仕掛けです。
 

                                                                                                                   written by 久次 昌彦